『社会学年報』第50巻に論文『親から暴力を受けた子どもの体罰容認意識ー世代間連鎖の観点から』が掲載されました.この論文は2018年の東北社会学会大会・数理社会学会および2019年の日本教育心理学会にて発表した内容に修正を加えたものです.執筆の際は,指導教官の永吉希久子先生には有意義なコメントを多数いただきました.この場を借りて御礼申し上げます.本当にありがとうございました.紙面ではご覧いただけますが,J-STAGEでの本文の公開は来年夏頃になります.以下に要約を掲載いたします

要約

本研究は,子どもへの体罰容認意識が世代間で受け継がれているかを検証するものである.これまでの虐待の研究では,虐待や暴力経験をもつ親の特性や,その虐待の内容といった研究は蓄積されているものの,そういった親が子どもへしつけとしての体罰を容認するのか,という世代間連鎖に関する実証的な研究は少ない.そこで本研究は,JGSS-2008を用いて親からの暴力経験は大人になったとき,子どもへの体罰容認意識にどのように影響を与えるのかについて,誰から暴力を受けたのか,ということと性別による暴力経験の受けやすさに焦点をあて分析を行った.結果,子どもの頃の暴力経験は,男性では経験の累積が体罰容認意識に影響を与えていたが,女性では一度でも経験がある場合は体罰容認意識に影響を与えていた.また,親からの暴力経験は男性でのみ体罰容認意識に効果がみられた.以上より,子どもの頃の親からの暴力経験は体罰容認意識へつながる可能性がある一方で,性別により子どもの頃の暴力経験が体罰容認意識へ与えるメカニズムが異なることも示唆された.

 

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