マルチレベル分析とイベントヒストリー分析(生存時間分析)の参考書

0.モチベーション

最近,マルチレベルとイベントヒストリーを授業で教える機会がありました.大学院の授業で習ったり,分析では使用していたものの,数式は追えていなかったので,この機会に勉強しました.その中で,個人的に参照してよかったな,というものをあげていきます.それぞれの分析法の説明は他にわかりやすいものがあると思うので,そちらをみてください.

1.マルチレベル分析

マルチレベル分析は,複数のレベルがあるデータを分析する際に用いる方法です.分散分析と考え方は似ていて,散らばりを集団と個人に分けて考えます.ランダム切片モデルからはじまり,ランダム係数モデル,クロスレベル交互作用を入れたモデル,マルチレベルSEMと応用可能性もあり,社会学では比較的よくみる分析法だと思います.私のようなあまり数学が得意でない人でもオススメの参考書は,

永吉本は,1つのまとまった章でマルチレベル分析が紹介されています.Rコードも載っています.尾崎本には実践編もあり,入門編が終わったらそちらに進むこともできます(私は未読です).清水本ではHLM7やHADといったソフトウェアを用いた分析方法も紹介されています.

2.イベントヒストリー分析(生存時間分析)

イベントヒストリー分析は,パネルデータを用いた分析方法で,分析方法の名前の通り生存/死亡,あるいは他にも結婚,転職といったイベントが起こるまでの時間に関しての分析です.イベントヒストリーでは,打ち切りという不完全な観測値にも対応でき,家族や労働といった分野でよく用いられている印象があります.数式が少し難しいのですが,その中でも私が読んで比較的理解が進んだ参考書は,

筒井ほか本は1つのまとまった章でイベントヒストリー分析が紹介されています.まず読むならこの本から始めてもよいと思います.杉本本は数式展開が細かく,精緻に数学的に理解を深めたいならオススメです.ISLも1章でイベントヒストリーが紹介されています.残念ながら日本語で訳された本には載っていないので,オリジナル版にあたる必要があります.ただし,ISLはオンライン上で公式にPDF版が公開されています(最高!).Allisonの邦訳は基本の理解を終えた方がモデルの理解を深めるための本かな,と思います.
ちなみに,以前は丸善出版から『生存時間分析』という黄色い本が出ていたのですが,2024年2月現在は手に入れることができないようです.

どなたかの参考になれば幸いです.

研究活動スタート支援に採択されました(社会学)

8月付けで研究活動スタート支援に採択されました.

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22K20190/

細目は社会学で,研究タイトルは「大衆化・多様化を遂げた学校外教育の再検討」です.

研究活動スタート支援は,博士を卒業し就職した年の5月頃に出す研究費で,色々大変な時期に応募することになりますが,若手支援のために採択率も他の科研費と比べると高い部類ですので,早め早めに準備して応募した方がよいと思います.

また,比較的最近できた制度のため,研究活動スタート支援に採択された方の情報も少ない印象がありました.私は先輩方の若手研究の申請書であったり,申請書の書き方のコツ,のようなサイトを参考に仕上げました.

リスク等の観点から公開はしていませんが,近しい分野かつ応募予定の方で申請書の閲覧をご希望の方がおられましたらメールをいただければお送りいたします.

第74回日本教育社会学会大会(220911)

9月11日,第74回日本教育社会学会大会にて「学校外教育の効果ー誰がご破算しているのかー」というテーマで発表を行いました.オンラインにもかかわらず多くの方にお越しいただき,有意義なコメントを多数いただきました.ありがとうございました.

発表資料に関しては,連絡をいただけましたらお送りいたします.

第73回数理社会学会大会(220828)

8月28日,第73回数理社会学会大会にて「通勤時間と生活満足度」というテーマでポスター発表を行いました.オンラインにもかかわらず多くの方にブレイクルームにお越しいただき,有意義なコメントを多数いただきました.ありがとうございました.

発表資料に関しては,連絡をいただけましたらお送りいたします.

The Seventh Joint US-Japan Conference on Mathematical Sociology and Rational Choice(220805)

8月5日にロサンゼルスコンベンションセンターにて,「Has Shadow Education Become Popular?」というタイトルでポスター発表を行いました.学校外教育が大衆化したのかを検討したもので,6月に『東京大学社会科学研究所 パネル調査プロジェクト ディスカッションペーパーシリーズ』にて報告をしたものを少し応用させた研究です.発表の際には有意義なコメントを多数いただきました,ありがとうございました.

発表資料に関しては,連絡をいただけましたらお送りいたします.

ディスカッション・ペーパーが掲載されました(220630)

東京大学社会科学研究所パネル調査プロジェクトのディスカッションペーパーシリーズにて,「学校外教育は大衆化したのか: 学校外教育経験と出生コーホートに関する基礎的分析」というタイトルのDPを執筆し,このたびHPに掲載されました.タイトル通りなのですが,このDPでは東京大学社会科学研究所パネル調査プロジェクトが実施している「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」における「継続サンプル」と「追加サンプル」,「リフレッシュサンプル」を用いて,学校外教育の経験割合のコーホート比較を行っているものです.学校外教育経験率は年々上昇し大衆化していますが,大衆化によって学校外教育を利用する要因に差は生じるのかを社会階層の観点から基礎的分析を行いました.本文については以下のリンクにて参照できます.ご笑覧下さい.

https://csrda.iss.u-tokyo.ac.jp/panel/dp/

Rの変数のリコード:2乗・対数・分位点

変数を2乗したい場合は,

データセット$変数名^2

()をつけてもいいですが,結果は変わらないみたいです.次に,変数を対数化したい場合には,

log(データセット$変数名)

でOKです.この場合の底は自然対数eになります.常用対数log10で考えたい場合には,

log(データセット$変数名, base = x)

のxに希望の底を入れましょう.最後に,分位点を求める場合は.

quantile(データセット$変数名, probs = x)

四分位をそれぞれ求める場合は,summary()も使えます.xに0.25,0.5,…と入れていっても同じ値が出ます.四分位ではなく三分位や五分位,a分位で分けたい場合にも,それぞれの境界の値をこちらではじき出し,以下以上のコードでうまいこと分位点でカテゴリー分けをします.

 

 

第94回日本社会学会大会(211113)

11月13日,第94回日本社会学会大会にて「学校外教育は大衆化したのかー東大社研パネル調査(JLPS)データの分析(5)」というテーマで発表を行いました.オンラインにもかかわらず多くの方にお越しいただき,有意義なコメントを多数いただきました.ありがとうございました.

発表資料に関しては,連絡をいただけましたらお送りいたします.

『社会学年報』に論文が掲載されました(211001)

『社会学年報』第50巻に論文『親から暴力を受けた子どもの体罰容認意識ー世代間連鎖の観点から』が掲載されました.この論文は2018年の東北社会学会大会・数理社会学会および2019年の日本教育心理学会にて発表した内容に修正を加えたものです.執筆の際は,指導教官の永吉希久子先生には有意義なコメントを多数いただきました.この場を借りて御礼申し上げます.本当にありがとうございました.紙面ではご覧いただけますが,J-STAGEでの本文の公開は来年夏頃になります.以下に要約を掲載いたします

要約

本研究は,子どもへの体罰容認意識が世代間で受け継がれているかを検証するものである.これまでの虐待の研究では,虐待や暴力経験をもつ親の特性や,その虐待の内容といった研究は蓄積されているものの,そういった親が子どもへしつけとしての体罰を容認するのか,という世代間連鎖に関する実証的な研究は少ない.そこで本研究は,JGSS-2008を用いて親からの暴力経験は大人になったとき,子どもへの体罰容認意識にどのように影響を与えるのかについて,誰から暴力を受けたのか,ということと性別による暴力経験の受けやすさに焦点をあて分析を行った.結果,子どもの頃の暴力経験は,男性では経験の累積が体罰容認意識に影響を与えていたが,女性では一度でも経験がある場合は体罰容認意識に影響を与えていた.また,親からの暴力経験は男性でのみ体罰容認意識に効果がみられた.以上より,子どもの頃の親からの暴力経験は体罰容認意識へつながる可能性がある一方で,性別により子どもの頃の暴力経験が体罰容認意識へ与えるメカニズムが異なることも示唆された.

 

第73回日本教育社会学会大会(210914)

9月14日、第73回日本教育社会学会大会にて「いじめ被害者および加害者の社会経済的地位の関連」というテーマで発表を行いました.オンラインにもかかわらず多くの方にお越しいただき,有意義なコメントを多数いただきました.ありがとうございました.

発表資料に関しては,連絡をいただけましたらお送りいたします.