『理論と方法』第37巻3号に論文『高等教育への進学における学校外教育の効果 :トラッキング後の挽回』が掲載されました.
この論文は,2017年3月に東北大学文学部に提出した卒業論文および2019年の第68回数理社会学会大会にて発表した内容に修正を加えたものです.
執筆の際は,指導教官の永吉希久子先生には有意義なコメントを多数いただきました.この場を借りて御礼申し上げます.本当にありがとうございました.
以下に要約を掲載いたします.
要約
本研究は,高等教育進学における学校外教育の効果を検討したものである.中等教育から高等教育への移行では,高校のトラッキング効果を念頭においた研究が多く,学校外教育の効果については等閑視されてきた.しかし,希望しない高校トラックに進んでも,学校外教育を利用することで成績が上がり,もともと希望していた高校トラックの進路に合流できる可能性もある.そこで本研究は,高校時代に学校外教育を受けることで,トラックの不利を挽回し,高い教育達成を遂げるようになるのかを,「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」のデータを用いて検討した.分析の結果,女性の学校外教育の利用は,より高い教育達成を促進していた.他方で,男性の学校外教育の利用は,短期大学・専門学校と4 年制大学以上の間の差を乗りこえる効果のみ示され,4 年制大学以下と銘柄大学の差を乗りこえる効果は示されなかった.また,高校トラックの違いによる学校外教育の効果の差異は男性でのみ一部確認された.これより,学校外教育は教育達成を促進する効果があり,さらに不利な高校トラックの挽回を支援する可能性もあることがわかった.