昨年9月に令和2年度の学術振興会特別研究員(DC2)の採用内定をいただきました(面接免除).細目は社会学です.インターネット上には多くの書き方などが載っていますので,そちらを参考にしていただけるとよい申請書が書けると思いますが,個人的に書くときに大事だな,と思った点を記しておこうと思います.また,その他に文系の私が参考になったサイト・書籍なども書き留めておきます.思いついたことを思いついたままに書いているので,支離滅裂な文章で申し訳ありません.

0前年度(DC1)の不採用

前年度も学振に応募はしていたものの,不採用でした.細目は「教育社会学」で出しました.学振では不採用の際におおよその順位がわかります.A(不採用のうち上位20%以内),B(不採用のうち上位20%50%),C(不採用のうち上位50%に至らなかった)で表されるのですが,僕はBでした.また,評点結果(5点満点)もわかります.①から③の項目は5段階の絶対評価,④は①〜③を考慮した相対評価です.不採用の時の評点は,

  1. 研究者としての資質 3.67
  2. 研究計画 3.00
  3. 研究計画遂行能力 4.00
  4. 総合評価 3.17

でした.総合評価3.17は,評価基準的には「採用してもよい」にあたります.みていただければわかるように研究計画があまりうまくいっていませんでした.当時の申請書をみても,どこがゴールなのか,具体的にどのような研究を行うのかが明確ではありませんでした.そこでDC2では,研究計画をとくに練り直しました.

1申請に向けて

1. 1 書くまで

以上のようなことをうけて,修論執筆が終わり,口頭試問を終えた2月〜3月からゆるゆると書類作成を再開しました.ただ,2月は学会の報告の準備をしていたり,大学院プログラムに応募したり,さらには卒業旅行なども行ったりしていたので,実質的には3月中旬から始めたような感じです.所属している大学では学内の説明会などもあり,それに参加し,採用内定をもらった方からのアドバイスなども参考にしました.

DC1では研究計画に頭を1番悩ませました.というのも,DC1を申請するM2春段階ではどのように自分の研究を博士でも進めるのかが漠然としていました.しかし,修論を執筆したり,院試に向けて準備を進める上で,テーマや方向性が明確になりました.院試などがある方はそちらで博士の研究計画を聞かれることも多いと思います.そのような場合には積極的に先生や先輩から自分の研究計画を添削してもらうと学振でも(前年度よりは)書ける気がします.

1. 2 細分

また,方向性が決まったことで,細目を教育社会学ではなく社会学で申請しようと考えるようになりました.僕のテーマの場合は,社会学,教育社会学,教育心理学,犯罪社会学,子ども学,のどれでも(一応)申請はできると思います.このように研究領域が複数の領域・分野にまたがっている人はどの細目で出すのか多分幾ばくか悩んだことがあるかもしれません.「どっちで出そう?」と.僕はDC1では漠然と「このテーマなら教育社会学かなぁ」くらいで決めてしまっていたのですが,具体的な内容が固まって行くにつれ,「これは社会学にかなりよった研究になる」と考え,細目の変更も視野に入れていました.また,受け入れ予定の指導教官は社会学を専門としていました.どれくらい指導教官の専門性と受け入れ学生の分野・領域が影響を与えるのかわかりませんが,少なくとも方向性が社会学の階層論に絡んでいて,指導教官の専門とも合致するために,社会学で提出しました.結果的に採用内定をもらったのですが,もし細目で迷った場合は先生方などに聞いてみてもいいのかもしれません

1. 3 内容 

書き方ですが,DC2の際に特に気をつけたのは,「専門外の人でもぱっと見で何をやりたいか大枠がわかるか」です.よく「ゴールを明確に」,「何を明らかにできたら勝ちかがわかるように」というアドバイスを見ますが,本当にその通りだと思います.2-3年の限られた年月で,「どこに的を絞って」,「どのような実験・分析・研究を行い」,「どこまで明らかにするのか」がわかるような研究計画を書くといいと思います.審査する側もたくさんの申請書を読むわけです.例えば,高校生の小論文の添削バイトをやることになったとしましょう.何十枚も答案を読むのは大変ですし,ましてやそれに点数をつけるとなればなおさらです.しかし,そのような中で論旨が明快なものがあれば非常に読みやすく印象もいいと思います.申請書でも同じで,他の申請書にはないような,「おっ」と目を引くような,やりたいことがすぐにわかって,この研究は価値があるから思わず採用したくなる申請書を目指すべきです.

書き方についても他の方が色々書いているのですが,個人的には,最初に結論を述べてしまう,というのがわかりやすく,書いていても文章をまとめやすかったです.例えば「これからの研究」の箇所では「本研究の目的は、○○を明らかにすることにある。」という風に最初に1行書いておくと,以下でどのような内容が語られるのか想像しやすく,頭に入ってきやすいと思います.また,私の場合,略語や専門用語は初出時に正式名称を記載したり,簡単な説明を付け加えるようにしました.もちろん専門外の方が読まれるかもしれないということもありますが,この言葉はちゃんとわかってますよ,とアピールするのにも使えるのかなと思います.

[20200331追記]研究遂行能力についての検索が多いので追記します.自己評価の部分では様々なことを盛り込みました.例えば積極的に学会に参加していたり,社会調査の経験があったり,論文として成果を発表したり,などです.加えて学会の研究関連でのTAや調査の手伝いなどはもちろんのこと,部活での活動やそれによる経験など,自分にしかない能力があってそれが研究をする上でどのように役立つのかを書けるとよいと思います.

1. 4 見た目

書く内容が決まったら,ひとまず書き上げてみます.2でもあげますが,先輩方の申請書などを使ってとりあえず埋めてみましょう.そしてできれば一晩くらいおくと,客観的に自分の申請書を読めるはずです.どの人も言いますが,申請書は見た目が適度に綺麗である必要があります.図表を入れ,文字サイズを大きくし,余白を作りましょう.図表に関しては1ページ全てを埋める必要があるときには図表を入れていました(現在までの研究状況,これからの研究計画(2)).また,フォント等に関しては僕は,

  • タイトルなど:ヒラギノ角ゴPro N W6 12pt
  • 地の文:ヒラギノ明朝Pro N W3 11pt

を使用していました.どちらもMacに入っていた書体ですが,見やすい(気がする)のでこれを選んでいます.また,英数字はTimes New Romanにしていました.文字サイズについて,10.5ptにフォントを設定するとたくさん書けますが読みにくいような気がして,12ptでは内容をほとんど書けなかったため,11ptにしました.ただし,10.5ptでもいいよ,という人もいるので,実際に書いた後に印刷してみて見た目を自分で確認してみることをお勧めします.

2参考にしたサイト,書籍など

箇条書きで書くと

  • 研究室の先輩方で学振に採用された方の申請書
  • 研究室の先生方の科研費書類
  • 大上雅史,2016『学振申請書の書き方とコツ DC/PD獲得を目指す若者へ』講談社.
  • ネット上で公開されている申請書
  • ネット上のアドバイス,スライド集(上でもあげた大上さんのスライドがわかりやすいです.)
  • 学内説明会などでの資料

などが参考になりました.1番参考になるのは自分の分野の先輩の申請書だと思います.書き方やレイアウトなども含めて最初はとりあえず真似ながら埋めてみることです.また,研究室の先生の科研費の申請書類なども見せてもらえるなら見せてもらいましょう.先生方は書き方を知っているので,説得的な文章の書き方がわかると思います.特に大胆な書きっぷりなどはかなり参考になりました.書籍の大上(2016)は学振の申請書に関する書き方を細やかに記しており,書き上げてからの校正などでも大変重宝します,東北大では図書館に入っていました.さらに,ネット上では有志の先輩方が申請書をあげてくださっています.僕は社会学なので当時東京大学の麦山亮太さんの申請書が大変役に立ちました.また,他にも申請書作成のための様々なスライドや申請書が上がっています.これらには学内限定などもあるので,情報収集をくまなく行い,申請書を書き上げてください.東北大では過去何年か分の申請書を学内の事務室で閲覧できるはずです.最後になりますが,公開してくださった先輩の方々,ありがとうございました.

[20200928追記]リスクの観点から申請書は公開していませんが,もし申請予定の方で私の申請書をご覧になりたい方はメールにて問い合わせいただければと思います.すみませんが,お送りするのは申請予定の方に限らせていただきます.

 

カテゴリー: 学会報告資料